平成22年度大会(第1回)大会報告を載せました

桜門体育学会平成22年度(第1回)大会報告
大会委員長

金野 潤(文理学部准教授)

 

桜門体育学会は,創設から40年を超える歴史の中で体育学・スポーツ科学分野における研究,教育に多大なる貢献をしてきました.その活動は,主に文理学部体育学研究室が中心となり,学術研究発表会や桜門体育学研究発刊事業などを含めて,同窓会に関わる業務を兼任してきました.しかし,学科運営業務は,年々複雑化するとともに1万人を超える同窓生への対応が困難な状況でした.そこで,学術・研究活動関連事業を切り離し,体育学科の外部組織として「桜門体育学会」は,新たな船出を迎えることとなりました.

今回は,学会改組後の記念すべき第1 回目の大会として,日本大学文理学部において平成22年12月12日(日)に開催されました.なお,参加人数は正会員70名,準会員78名の合計148名と盛況でした.

 

【大会内容】

(1)一般発表(ポスター) 発表演題と発表者の一覧をご覧ください.

(2)理事会

(3)特別講演

「身体運動の程度-宇宙医学から高地トレーニングまで」

講演内容はこちらです。

講師:岩崎賢一氏(日本大学医学部社会医学系衛生学分野 教授)

司会:鈴木 典(日本大学)

(4)学会企画シンポジウム

「桜門体育学会のこれまでとこれから」

概要はこちらです。

パネリスト:吉本俊明(日本大学),鈴木典(日本大学),渋倉崇行(新潟県立大学),下河内洋平(大阪体育大学),水落文夫(日本大学)

司会:近藤明彦(慶応義塾大学)

(5)総会

(6)懇親会

 

午前中は百周年記念館エントランスホールにて24題のポスター発表が行われました.開始時刻前から沢山の参加者がポスター前に集合していました.午前10時45分より座長を奈良雅之先生(目白大学)と野口智博先生(日本大学)にお引き受けいただき,プレゼンテーションが開始されました.演者の中には院生や教員に混ざり体育学科のゼミ生(3 年生)や,卒論を題材にした4年生による発表も多く見られ,限られた持ち時間の中で,効率よく研究内容を伝えることに苦労している様子でした.しかし,お二人の座長のスムーズな進行により活発な質疑応答も含まれながらも時間内に全発表を終了することができました.

午後は,国際会議場に会場を移し,岩崎賢一先生(日本大学医学部)による特別講演として,「身体運動の程度-宇宙医学から高地トレーニングまで」のテーマでお話いただきました.宇宙,無重力といった普段は,意識すらしていない特異な環境が、身体活動の低下によって起こる人体への影響と類似する現象を引き起こすことを,宇宙医学分野の研究成果などからお話しいただきました.また,近年,多くのアスリートが高地トレーニングによる低酸素環境の刺激で身体能力の向上を図ることを行っていますが,十分な効果を得るためには,トレーニングの方法や量を的確に選別し,各個人のコンディショニングに応じてプログラムされなければならないこと,また,これらを誤ればマイナスの効果を生み出しかねない危険性についても医学的立場からお話いただきました.専門性の高い実例などを拝聴できたことは,今後の研究及び,スポーツ実践の場で,より活かされると思います.

シンポジウムでは,「桜門体育学会のこれまでとこれからを考える」をメインテーマとして各パネリストから講演や話題提供をいただきました.基調講演として吉本先生より「桜門体育学会のこれまでの活動とこれからの夢」として,桜門体育学会発足の経緯や研究活動の実績を,当時の貴重な資料とともに紹介されました.若い研究者にとっては,先人達の研究の積み重ねが,現在の桜門体育学会の礎となっていることを改めて感じさせる内容であり、感慨深い講演でした.また,鈴木典先生「学界主導プロジェクト研究」,渋倉崇行先生「アクティビティが高い研究グループの活躍-動機づけ研究会の活動を例として-」,下河内洋平先生には「最新スポーツ医学研究とその現場還元の課題-日米の現状比較を踏まえて-」のテーマで講演していただきました。それぞれ最新の研究事例をご紹介いただきながら,成果をいかに現場にフィードバックしていくかという方法論も具体的にご紹介いただきました.最後に水落文夫先生より「組織としての桜門体育学会のあり方」と題し,組織改編の理由と狙いをご説明いただき,今後いかに組織を永続的に発展させていくかをご提案いただきました.パネリストの先生方の講演からは,新しく生まれ変わった桜門体育学会が,アカデミック的向上と現場への還元という命題を両立していくための方向性を示していただくとともに,組織としての基盤を強固にしていくことの重要性を,各会員に再認識させるものでした.シンポジウム全体を振り返ると,学会及び研究活動が今後も継承するべきもの、変革するべきものの吟味と実践が不可欠であるように感じました。記念すべき改組第一回目の大会として今回の議論は、今後の大きな指標になることでしょう.

17時30分から3 号館1 階のコスモスにて懇親会が行われました.約50名の参加者があり,親睦を深めました.また,理事会,総会も円滑に進行され,つつがなく終了したことを付け加えておきます.

最後に今回の大会にご尽力いただいた先生方,研究室,大学院生,そしてご参加いただいた皆様に心からの御礼を申し上げます.

ポスター発表の様子.
24演題の発表に学生,院生を中心とした参加者も真剣に聞き入った.
左は司会の奈良雅之先生.